3.調査結果と考察
T.コンピュータを使うことについて
【設問の設定意図】
小中学校で教育用コンピュータの整備が進み、学習活動においてコンピュータが広く使われ、また、家庭での普及も目覚ましい現在、児童・生徒のコンピュータリテラシーの実態を把握し、今後の指導に生かしていくことを目的に、設問を設定した。

1 パソコンの正しい電源の入れ方、切り方がわかりますか。
 学年が上がるにつれて向上しており、経験を積むことで確実に定着していると考えられる。
 ごく少数ではあるが「できない」と回答している児童・生徒には個別に指導するなどの手立てをとりながら、100%を目指したい項目である。

2 自分が使いたいソフトを起動したり、終了することができますか。
 4年生からぐっと数値が高まっているが、中2でも70%台にとどまっていることは物足りなさを感じる。
 小学校では、二人組みでの学習形態のなかで起動や終了を慣れている方が行うという場面も多く、できない子はいつまでもできないままに学習が進んでしまうことが考えられる。意図的に全員に経験させ、しっかりと身に付けさせたい。
 中学校では使用するソフトが多様化するに伴って、起動の方法もスタートメニューから、ディスクトップから、CD−ROMから等違ってくるため、自信を持って「はい」と回答できなかったとも考えられるが、コンピュータを学習に有効活用するためには、さらに向上させていかなければならない。

3 どんな方法で文字を打ち込んでいますか。
 4年生以上で「できない」が一桁まで減っている。この時期から文字を打ち込む必要性が出てきていることの表れであろう。遊び感覚で使ったり、情報を得るだけの段階から、作ったり、まとめたり、発表したりといった活用方法の広がりが感じられる。
 ローマ字を学習する4年生から、ローマ字入力が増えている。中学校への繋がりを重視すれば、ローマ字入力を勧めることも必要であろうが、逆にそのことが活用の妨げになってしまうことも考えられるので、議論・検討が必要。
 中学校では、英語学習との関連でローマ字入力が有用だが、85%程度にとどまっている。

4 インターネットで自分が知りたいことを探すことができますか。できることを全部選んでください。
 特に小学校においては、どの学年からインターネットの活用方法を指導するかが各学校の指導計画によって違う可能性があるため、3年生の数値が低いことが指導上の問題と読み取りことはできない。
 5年生になると「できない」が8%まで、中2で3%まで下がる。また、検索エンジンの使用率が上がることから、ただ開いてみるのではなく「調べたいことを調べる」情報源として活用されていることがうかがえる。ただし、インターネットの活用、特に検索エンジンに関しては、モラル面とあわせての指導が必要である。

5 パソコンに関係するどんな機器を使うことができますか。できるものを全部選んでください。
 最も使える率が高いプリンターでも40%台にとどまっているのは、「プリンターは先生の許可をもらって」「先生にしてもらう」など、使用上の約束も関係していると思われる。
 デジタルカメラは見学の記録を中心に活用されていることから、小学校中学年でも20%以上の数値に結びついていると考えられる。
 スキャナについては教師側のリテラシーの向上も課題になると思われる。

6 デジタルカメラで撮った写真を、自分の作品などに取り込むことができますか。
 学年を追うごとにできる割合が増えているが、まだ25〜30%台にとどまっている。
「やってみたい」「できるようになりたい」という声が児童・生徒、教師ともに多い技術であることから、校内研修等の充実をはかり、児童・生徒への還元が望まれる。

7 自分の作品を保存する(何かに記録する)ことができますか。できるものを全部選んでください。
 PCの指定場所にという回答が多かったことは、実際の学習でも、そうした指導のもとに保存する方法を身に付けていることの表れであると考えられる。
 保存する内容によって、保存方法も使い分けられるように育てていきたい。特に、情報管理の観点と、ハードディスクの容量などの問題からMOなど外部のものに保存するといった対応を進めていくことも必要と考える。

8 保存したものを呼び出すことができますか。
 学年を追ってできる割合が増えている。
学年が上がるほどに作品つくりやまとめの作業に時間がかかり、一旦保存したものを再度開いて作業を継続するといった流れが予想される。ファイル呼び出しの必要性の有無もリテラシーの向上に関係すると思われる。

9 パソコンを使って、レポートや掲示物をつくることができますか。
 学年が上がるにつれてできる割合も増えている。ただし、主に技術・家庭の学習内容、指導計画によっては、必ずしもこの内容がリテラシーとして直接的に指導が行われない場合があることも考えられる。
 調査時期と学習時期との関連から、実際には2学年の最終段階では、さらに多くの生徒がこのスキルを身につけることと思われる。

10 文字を打ち込むときに、どのようにしていますか。
 まだキーボード操作に習熟していない生徒が60%以上を占める。
様々な学習活動でPCを活用するために、伸ばしていきたいスキルである。ホームポジションは、タイピングソフトなどを活用しながら、早い時期に意識して取り組ませ、積み上げていくことが大切であろう。

11 電子メールを送ることができますか。
 現在は、学校での学習活動よりも、家庭での使用状況との関連が深い。
 学校では、情報提供の依頼、御礼などを教師や一部の生徒が行う程度が多い現状である思われるが、今後、広範囲・多対象と瞬時に交流できるという電子メールの特性を生かした学習活動が広まっていけば、身に付ける価値が大いに高まっていくと考えられる。

【 考 察 】
 学年を追うごとにリテラシーの向上が見られる項目が多い。が、ソフトの起動やファイルの保存など、限りなく100に近づけたいリテラシーついて、中2段階でも「できない」という回答も見られることから、個人差にも対応した指導の必要性が感じられる。
 家庭で自由にPCを使える児童・生徒群と家にPCがない生徒群を比較すると、すべての項目において家で自由にPCを使える生徒群のスキルが上回っていた。家でインターネットを一日一時間以上利用する群は、さらに上回っている。コンピュータの学習において、これらの差を十分考慮して指導にあたるとともに、年間指導計画に基づいた系統性のある学習によって、その格差を少しでも埋めていくことが望まれる。
 家庭環境による差は今後も見られるであろうが、学校では、授業以外でも必要に応じてPCを使うことができる環境整備や周辺機器使用の自由度を高めていくなどの手立てによって「慣れる」ことが必要であると考えられる。

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