4.調査研究まとめと今後の課題
 今回の調査によって,大きく3つの実態が浮き彫りになったと思われる。そこから生じてきた問題点や今後の課題についてまとめてみたい。

 まず,第1に「児童・生徒はもっとコンピュータを使いたいという願いをもっている」ということである。
 アンケートの数値から積極的イメージを持つ子どもが多数を占めていることがわかる。また,あらゆる教科において,コンピュータを活用した学習を期待している。
 こうした実態にあわせて,各教科において幅広く活用されるような学習内容や活動を開発していくことが必要となる。さらに,特別活動での活用や授業時間外のコンピュータ室の開放など,利用機会を増やしていく学校の体制面からの工夫も望まれるところである。

 第2に「ハード普及の勢いに伴って高まったスキル面と,それに追いつかないモラル面」である。
 この調査の結果から見る限り,家庭での普及率は7割を超え,全国の普及率を大きく上回っている。社会的な流れの一環であるともとれるが,学校での学習で楽しさを味わった子どもたちが持った「家でも使いたい」という願いを持ち,家庭がそれに応え始めている表れともとれるのではないだろうか。
 しかし,それに伴って考慮されるべき家庭での約束事が不十分なまま,インターネットの世界に飛び出していってしまっている実態も見えてきた。特にモラル面での意識の低さは,児童・生徒自身の知識不足,意識の低さが要因となっていると考えられ,さらにその原因は学校における指導が,スキル面に比べて遅れているのと実態によるものとも考えらる。コンピュータの活用方法が広がれば広がるほど,今後,ますます重視して指導していかなければならないことは明らかである。

 第3に,「個人差へ対応と,デバイドを今以上に広げないための手立てが必要」ということである。
 リテラシー定着に関しての調査では,学校ごとの指導計画に基づいた指導の積み上げがうかがえる。しかし,その値を他の要因と関連づけて分析した場合,家庭環境による格差があることは現実である。
 この差は早急に解決できる問題ではないので,今後も個人差を考慮した学習活動を工夫していくことが求められる。さらに,この差を少しでも埋めていくためには,年間指導計画の整備とそれに基づいた系統性のある学習を,学校・学年・学級間の格差が生じないよう確実に実行してことが重要である。さらに必要によっては,他の学習と同様,個別の指導も考えていくべきであろう。

 今回,山形市独自のものとしては初めて実施した調査であったが,小・中学校ならびにその家庭の実態から,これまでの成果と課題が明らかになった。これからの情報教育の方向性を具体化するためには大いに意義があったと考える。今後も追跡調査し,ここに表れた課題が解決の方向に進んでいくことを確かめながら,今後の発展につながる新たな提言をしていくことを視野に入れていきたい。
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