4.調査研究まとめと今後の課題
 前回の調査で浮き彫りになった3つの実態及び課題(詳しくは前年度のまとめ参照)がどのように変化し、改善されてきているかに目を向けて、今年度の結果をまとめてみたい。

その1「子どもの欲求への対応不足」に関して
 今回の調査によって、子どもたちのリテラシーが前年度よりも高まっていることがわかる。これは、学習においてコンピュータを活用する機会が以前よりも増し、それに伴い必然的に「できること」が増えてきたことが反映したものと考えられる。さらに、総合的な学習のまとめの手立てとして活用されている例も見られるなど、子どもたちの「コンピュータを使いたい」という欲求に応えられている度合いは、昨年度よりも増しているといえるのではないだろうか。
 また、中学校においては、「どの小学校でも、少なくともここまでは経験している」という前提が成り立てば、それに基づいてスタートラインを先に設定することができる。そうなれば、今以上に広く、深い内容で生徒たちの欲求に応えていくことができる可能性があるのではないだろうか。

その2「スキル面の向上に追いついていないモラル面」に関して
 前回の結果は、インターネット利用時の約束事が無いなど、特に、家庭でのモラル面の意識の低さが懸念されるものであった。調査の結果を見る限り、残念ながら今回も改善されているとは言い難い。小学校高学年から、家庭でインターネットを利用する機会が増えているが、それと逆行するように、約束事は少なくなっている。また、「モラルの定着」の調査では、どの学年にも大きな差が見られず、学年が上がるにつれてモラルが高まるという結果は表れていない。 インターネット利用の自由度が高くなるほど危険度も増すということを家庭に啓蒙していくことが急務であろう。もちろん、学校においてはリテラシー面と同様に、計画的に指導を積み上げていくことの重要性を改めて強調したい。

その3「デジタルデバイドへの対応」に関して
 子どもたちのリテラシー面が向上していることから、各校で指導計画が整備され、それに基づいた学習が進められ始めていることがうかがえる。特に、小学校では、教科として確立されていない分、指導者によって子どもたちの経験に大きな差が生じないように、情報教育担当者を中心とした計画的な指導が重要である。
 また、家庭でのコンピュータに接する機会の有無によっていやおうなしにデバイドは生じてしまう。高いレベルに全員を合わせることは現実的には難しいであろう。やはり、「最低限、みんながここまではできるように」といった実践が進められるように、指導計画の整備と実施が学校の責任であると言えるのではないだろうか。

 2年連続で調査を行ったことにより、コンピュータが子どもたちの生活の中にさらに広がっていることが明らかになった。学校での活用場面が増えてきているという情報教育の前進を示す結果が見られた反面、モラル面の意識の低さなど、改善が足踏みしている課題も見えている。課題解決のための、あるいはさらに前進していくための具体的な手立てが、今年度より稼動したネットワークを活用しながら広まり、共有されていくことを期待したい。

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