V 「情報モラル」定着の実態
【設問について】
 学校の授業でもコンピュータが日常的に活用されている中、児童・生徒の情報モラルについての定着状況を把握すると共に、今後指導が必要とされる事項について確認し今後の指導の参考にするため、以下の設問を設けた。

質問11.自分の他に友だちも写っている写真をホームページに出す時、気をつけなければならないことは何でしょうか。

・学年が進むにつれて、友だちに許可をもらう児童生徒が増えている。これは、学年が進むにつれ授業の中で写真を撮影して活用したりする機会が多くなり、その活用の仕方を十分注意しなければならないという意識が高まってきていることを表している。一方で、各学年の1割以上の子どもは、他人の写っている写真を掲載することをいけないことだと考えている。各学校で「肖像権」についてきちんと指導する必要がある。


質問12.他人のホームページにのっている詩や写真を自分のホームページに載せる時、気をつけなければならないことは何でしょう。

・質問11同様、学年が進むにつれ、他人のホームページの詩や写真を使用する時は、許可をとってから使うと答えている児童生徒が増えている。また、他人のものは絶対使ってはいけないと考える子どもも各学年2割程度いる。さらに小3〜小4年では、わからないと答えている子どもが過半数を占めていることから、写真などを活用する学習経験が少ないことも影響している。この実態を踏まえながら、「著作権」に関する指導をさらに推進していく必要がある。また、今後は一般的な「著作権」と合わせて、効果的に指導していくことが望ましい。


質問13.インターネットで調べているうちに、変な写真が掲載されているページが現れました。あなたはどうしますか。

・すべての学年でページを見ないようにするが過半数を占めており、有害情報に関する指導の成果が表れてきていると考える。ただし、小3ではわからないが約4割もいることから、インターネットを本格的に利用し始める段階で、「有害情報」に関する正しい理解と対処の仕方を指導しなければならない。一方で、「見続ける」は学年が進むにつれて増加傾向にあり、日頃から調べ学習でインターネットを利用する時間が増えるにつれて、「有害情報」と接する機会が多くなっているものと考えられる。今後は、生徒指導とも連携を図りながら有害情報に関する指導の徹底と、系統だった指導計画の見直しがより一層求められる。


質問14.家に「24時間以内に、5人この電子メールを出さないと、あなたは不幸になる。このメールをすぐに出しなさい。」というメールが届きました。あなたはどうしますか。 
・迷惑メールには関わらないと回答した子どもが、小3を除く各学年で6割以上を占め、迷惑メールには乗らない、加担しないという強い意志が表れていると考えられる。しかし、すべての学年で「すぐに出す」「送り返す」という児童生徒が、合わせて約2割もいる実態が明らかになった。このことから、小中を問わず迷惑メールへの対処方法について正しい認識をもつための指導をしていく必要がある。また、相手の顔が見えないインターネット上では、規範意識も合わせて高めていくことが何よりも大切である。

質問15.インターネット上で知り合った人に、伝えて良いあなたの情報はどれでしょうか。すべて選んでください。(複数回答可)
・すべての学年で住所・電話番号が1割程度にとどまっているのに対して、生年月日は学年を問わず3割程度が教えても良いとしている。生年月日などを教えることは、本人と直接会うことのないインターネット上では、相手がどんな人物であるか、信用できる人なのかどうか判断することは困難である。そのため、個人情報は十分注意して扱わなければならない。原則的に「住所」「電話番号」「生年月日」「身長や体重」などの情報は非公開であることを徹底すると共に、必要に応じて「個人情報」を教える際には、家の人と相談するなど慎重に対応することを加えて指導しておく必要がある。

質問16.学校でインターネットを見ている時に、学習に役立ちそうなプログラムソフトを見つけました。あなたはどうしますか。
・各学年を通して「許可を得てためす」が第1位である。また、「すぐにためす」は学年が進むにつれて多くなる傾向が見られる。一方で「学校でためしてはいけない」は中学生の方が多く、2割程度である。
 公共物である学校のコンピュータで、プログラムをダウンロードし使用することは原則禁止する必要がある。しかし、必要が生じた場合のことを想定して、対処手順や約束を各学校で再点検する必要がある。プログラムのダウンロードに関しては、ウィルス対策とも関連するので、学年に応じて指導していくべきである。

質問17.学校でインターネットをしているうちに、急にうずまき模様が画面に表れるようになりました。あたなはどうしますか。
・各学年で約7割が先生に報告するとしており、事態の重大さを深刻に受け止めていることがうかがえる。ただし、小6以上になるとパソコンに詳しい友だちを呼ぶ傾向が見られたり、学年を問わず「スイッチを切る」「わからない」と回答する児童生徒が少なくない状況を踏まえ、異常に気づいた時はいち早く先生に知らせ早急に対処してもらう手順を確認することが大切である。また、実社会ではすでにウィルス対策が必要不可欠になっている事を重視し、ウィルス被害の深刻さやウィルス対策の重要性について、具体的な事例をもとに学年に応じた指導を実施する必要がある。特に、興味本位にウィルスを作ることは犯罪であることを明確に指導することが求められる。

質問18.コンピュータのパスワードを管理するためには、どうすればよいでしょうか。
・パスワードを「メモをする」「貼り付ける」とした子どもを合わせると、ほとんどの学年で約6割にも上っている。このことは、経験が少ないことや必要性を感じる場面が少ないことが要因ではないかと考える。また、反対に暗記する子どもは学年に関係なく1割強にとどまっている実態も明らかになった。
 現状では子どもにとってあまり馴染みのないパスワードではあるが、具体的な事例をもとに学年に応じた指導を計画的に実施する必要があると考える。

質問19.インターネットで買い物をする時に大切なことはなんでしょうか。

・インターネットから気軽に買い物ができる状況を踏まえ、「相談して買う」がどの学年でも第1位であることは良好な状況にある。しかし、中2以上に「安ければ買う」が1割程度いることからも、家庭での金銭管理など、生徒指導とあわせて指導していく必要があると考える。
 日常の買い物に関する指導と同じように、インターネットでの買い物も指導していくことが重要である。ただし、インターネットでの買い物は仮想現実的なところがあり金銭感覚が鈍ることも考えられるので、指導する際には授業に有効なホームページを活したり、模擬ネットショッピングを体験したりするなど創意工夫が求められる。



【 考 察 】

 今回のアンケートでは、身近なこととして受け止めにくい質問項目がいくつかあった。児童・生徒が、インターネットなどで様々な情報に触れる機会は大変多くなっており、それに伴うトラブルや対処法について正しい知識を得ることが必要になってきている。特に情報モラルについては、現在、そしてこれからも情報社会の一員として必要とされる力であるだけに、是非指導していかなければならない。また、校内において指導計画を準備し、全教職員の理解を図り学校全体として取り組む必要性がある。
 今後は、学校と家庭での連携と情報交換がさらに必要になってくるとともに、保護者へ学校での指導内容や子供たちの実態について説明し、各家庭での約束事を決めてもらうなど、協力を仰がなければならないと考える。


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