リテラシー面の調査結果を見ると,昨年度までと同様,学年に合わせてほぼ右肩上がりとなっている。変化の度合いはゆるやかではあるが,着実に定着してきているということは言えそうである。
インターネット活用を主とした「情報を収集する手段」としてのコンピュータ利用については,充実してきている。その一方で,ワープロソフトやプレゼンテーションソフトなどを用いて「表現する手段」「発信する手段」としてコンピュータを利用することについては,より一層のリテラシーの充実が望まれる。
家庭でのコンピュータ利用の実態については,昨年度に引き続き,けっして楽観視はできない状況にあると言える。家庭で親との約束事を決めてインターネットを利用している児童・生徒の割合が増加してきているのはよい傾向だが,携帯電話所持率や趣味的な用途でのインターネット利用もやはり増加しているため,注意が必要である。ネット上でのトラブルに巻き込まれることのないように,インターネットの適切な利用の仕方やネット社会に潜む危険性の理解,著作権等に対する認識などについては,学校でも具体的な例を示しながら十分指導し,家庭にも啓蒙を促していくことが重要になっていくと考えられる。
情報モラル・・・著作権や個人情報保護,有害情報やネット上のトラブルに対する対処の仕方などについての児童生徒の認識は,わずかではあるが高まってきた。小・中ともに,適切な時期に適切な指導を行っている学校が増えてきた結果の表れと見ることができる。情報モラルについては,「きまり」や「約束」として児童生徒に教える方法も効果的ではあるが,そのきまりや約束の根拠となる部分を理解させたり,コンピュータやインターネットを介しても基本的には人と人とのコミュニケーションが根幹にあるという意識をもたせたりすることも非常に重要であると考える。
昨年度の考察でもふれられていたが,今後,児童・生徒のリテラシーやモラルを高めていくために,市内の学校間での情報交換,関係機関や専門家との連携,家庭との連携などを推進していくことは,やはり効果がありそうである。情報教育全体計画や学年ごとの年間計画,実践の記録や教材,資料などを共有し,そこからよりよいものをつくり出していこうとする動きが,今後ますます活性化することを期待したい。
これまでもそうであったが,これからも留意しなければならない大きな課題は,リテラシー面,モラル面ともに,学校や学年間,あるいは学級間で差が生じないようにしていく,ということである。本調査の目的は市内小中学生の全体的な傾向と推移をとらえることにあり,そのために抽出児童・生徒によるアンケート方式を採用しているので,各校の実態についての正確なデータは得られない。しかしながら,この調査研究の結果は,情報リテラシーやモラルの育成を「学校全体で組織的・計画的に取り組むべき重要課題」としてとらえ,指導の充実を推進していく上では,大いに参考になるのではないだろうか。 |