4 調査研究まとめと今後の課題 
 リテラシーについては、基本的な事項については学年が進むにつれ習得率が上がっている。これは、ここ2,3年同じような傾向が見られる。インターネットは情報収集が中心となっている。今後、目的にあった情報の探し方や情報に対する真偽の判断などへの指導も必要であろう。
 また、学習の中でデジタルカメラを使う場面が増えているにもかかわらず、使用できる児童の割合が増えない。これは、児童数に対してデジタルカメラの数が少ないのではないかと予想される。それに対して、今年度初めて調査した動画編集は比較的高い数値を示している。動画編集はこれからの学習の中でも扱うことが考えられる。これらの学習に対応したハードウェアの整備も必要となってくるであろう。
 情報発信の手段としてプレゼンテーションソフトの割合が高くなってきている反面、メールの割合が下降してきている。メールは当然ながら相手が必要である。学校間の連携はもちろん、交流相手をどのように探すかも課題となってきている。
 中学校のリテラシーもこの2,3年同じような傾向となっている。インターネットができる生徒はほぼ100%になっている。ワープロソフトでの文書編集の割合が少なくなっているが、文書作成の場面が、ワープロばかりでなく、メールなどでも行っており、「ワープロ」という言葉そのものが子どもになじみ薄くなってきているのかもしれない。
 また、学校以外の場でメール・掲示板・音楽等のダウンロードを行っている者が年を追うごとに増えてきている。今年度は、掲示板への書き込みは5割以上、ブログ等の公開も3割近くの子が可能と答えているのは特筆すべきことである。

 家庭でのインターネット接続率が80%を越え、特別のものではなくなってきていることが伺える。インターネットを使用している児童生徒のうち約80%が約束事を決めているが、約20%は何の約束もされていない。この20%の児童生徒がどのようなサイトにアクセスしているのか懸念されるところである。
 また、携帯電話の所有率もほとんどの学年で増加傾向にある。保護者は安全のために所持させるという理由が考えられるが、児童・生徒の使用用途を見ると「通話」よりも「メール」や「カメラ」「インターネット利用」の方が多い。通話料金の関係もあってメール使用が多くなっていると考えられるが、どちらかというと娯楽に近い形で利用されているようである。ともあれ、携帯電話を用いて情報を得たり、交換したりということが子ども達に身近なものになってきたことは確かである。中学入学と同時に携帯電話を購入することも多いと思うが、携帯電話各社でも2005年からフィリタリングソフト推奨の対応が始められ、このことが導入する保護者の増加と結びついていることが伺える。(2007年12月10日より総務省より推奨を強化するように携帯各社に指導があった。)このように、望ましくないサイトへのアクセス制限は、コンピュータ・携帯電話ともに、学校ばかりでなく家庭・地域や社会全体との連携が重要である。

 以上のことから学校として、情報機器の操作やソフトウェアの使い方の指導はもちろん「情報モラル」の指導が重要となってきている。
 出会い系サイトに関した犯罪や掲示板による「いじめ」のニュースが流れない日はない。チャットや様々なインターネットでのサービスを児童生徒が利用している現状を鑑みたとき、ネット社会で自分自身を守る手だてや事件に巻き込まれたときの対応などを知っておく必要性を強く感じる。
 また、今回のアンケートで新設した、「コンピュータを使ってやりたいこと」という自由記述の問いに対して「悪口を書く」「ウイルスをばらまく」「いたずらする」などの非社会的・反社会的欲求を満たしたいという回答も多かった。これは、誰しも持っている感情であると思うが、匿名性ゆえに問題になるネットワーク上のトラブルの根幹でもある。 被害者にならない指導はもちろんであるが、加害者あるいは、情報漏洩の元とならない指導ならびに研修が喫緊の課題といわざるを得ない。 
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